2021年3月29日月曜日

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||とスターウォーズ シークエル

 先日『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を観に行ってきました。このシリーズの存在は知っていたのですが、手を出したのは二ヶ月ほど前の2月上旬で、そこから一気に漫画意外の作品を観ました。ですので95年のテレビシリーズからリアルタイムで観ていた世代の方や、2012年の前作『ヱヴァンゲリヲン劇場版:Q』から今作までの9年間を、今か今かと待たされた方に比べたらライトな観客だと思います。

エヴァンゲリオンと言えば複雑なストーリー、難解に聞こえるセリフ、多くの伏線と回収など、謎が謎を呼ぶ展開に飲み込まれて、考察などを漁っている方も多いかと思います。私もテレビ版の2話位まではストーリーを追うために必死に考えながら観ていたのですが、あまりにも唐突な展開や難解な設定から、ストーリーを追う作品ではなく、ストーリーの奥を読むタイプの作品だと認識したので観方を変えました。すると見えてきたのは、思春期から大人になる過程の話。しかしここで言う「思春期」、「大人」と言うのは生物的な年齢によるものではなく、内面的、精神年齢的な物に感じます。出てくるキャラクターが大人も含めてほぼ厨二、背伸びして考えた様な伏線、特に内容が無いのに複雑に聞こえるセリフなど、子供が大人に憧れる様、まさしく思春期から大人に移り変わる様子が描かれている。そう考えるとテレビシリーズで問題になっているラスト二話も納得できます。陰謀論的な設定や思春期の子供達が食い付きそうな話を物語に組み込み、その話は関係無かったかの如く切り捨て話を終える(一応ストーリーとしての辻褄は合っている)。まさしく厨二的な物との決別によって大人になるという風に感じました。そこからの旧劇場版も若干説明を丁寧にしているが言いたい事はテレビ版と同じだと思っています。

今回の作品はエヴァンゲリオンのリビルドされたシリーズの4作目であり完結編でした。作品としてはとても満足のいく良い作品だったんですが、観終わった後一つ気になる事がありました。それは私の好きなスターウォーズの新しいシリーズであるシークエルについてです。エヴァンゲリオンを観た後になぜスターウォーズなのかと思われるでしょうが、順を追って説明します。まず今回のエヴァンゲリオン新劇場版は一応テレビシリーズのリビルドなので細かい違いはありますが1作目の『序』、2作目の『破』までは観た事のある展開で進んでいきます。しかも破ではファンが観たかった展開に変更され、爽快なロボットアニメの様に表現されており、人気のある作品になっています。問題は3作目の『Q』です。突如14年後の世界から始まり、テレビシリーズとは全く異なるストーリーで観る人に混乱を与えた挙句、丸投げ感が半端なく、全ての謎は最終作の次回で完結といった具合に、最終作への期待をこれでもかというほど上げて終わります。私は観終わった後にやっとエヴァンゲリオンっぽい作品になってきたと次回作への期待も膨らみましたし何より、予定調和に進む事を拒否した『Q』という作品をとても好きになりました。庵野監督は次に何をするのか、期待を胸に今回のシン・エヴァンゲリオンを劇場で観ました。結果は先ほども言った様に満足する内容でしたし、回収する事など不可能に思えたQの展開から、そしてすべてのエヴァンゲリオンを綺麗に終わらせる事ができており、二ヶ月前から加わった新参者にも大きな感動を与えてくれました。ここまで読んだ方の中でお気づきの方もいるかと思いますが、これ何かに似ていませんか?結末は違いますが、そうです、スターウォーズのシークエルである『7』『8』『9』です。

スターウォーズのシークエルは別にリビルトされた作品では無いですし、監督、脚本が作品ごとに違うので今回のエヴァンゲリオンの様に一人の作家を中心に作った作品と比べるのは違うかもしれませんが、私には人事の様に思えない理由があります。まず、エヴァンゲリオン『序』『破』で観られた様な、今まで観た絵、ファンの観たかった話というのはスターウォーズ『7』と類似する点があります。旧作に出ていたルークやハン・ソロやレイヤを登場させたり『1』『2』『3』のプリクエルではなく、『4』『5』『6』の世界観をベースにするのは今まで観た絵、ファンが観たかった話であります。私は劇場で観た後にこれぞ観たかったスターウォーズだと思ったのと同時に、フォースのバランスが取れたはずの世界が何故まだ争っているのか、何故ルークが行方を眩まして独り隠居生活送っているのかなど、適度な謎によって次回作への期待を膨らましていたのを昨日の様に覚えています。そしてエヴァンゲリオン『Q』とスターウォーズ『8』です。どちらの作品も今までの流れを変える作品になっており、物語や設定を破壊している様に感じました。スターウォーズ『8』を劇場で観た私はとてもショックを受け、作品の否定をずっとしていました。フォースが魔法の様な扱いになり何でも有りになり、物語は何も進まずリセットされ、映画としても長いだけで面白い作品ではありませんでした。これにより次作ではよっぽどの展開がない限り終われないのではないかと不安になっていました。最後に『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』とスターウォーズ『9』です。どちらも物語を終わらせる作品ですが、残念ながらスターウォーズは前作のショッキングな展開を上手く使う事が出来ず、満足のいく作品にはなりませんでした。

どちらの作品も終わらせる話だと思います。スターウォーズ『7』『8』『9』でルーク、ハン・ソロ、レイアなどの旧キャラクターが亡くなっていくのも、エヴァンゲリオンでシンジ、アスカ、レイなどが大人になるのも同じだったのだと。そして私個人としては、スターウォーズは小さい頃から観ていた作品なので、ここでいう「思春期」真っ只中の作品だと思います。『Q』は受け入れる事ができるのにスターウォーズ『8』は受け入れられないのもそういう理由だと。もしスターウォーズ『8』『9』の間の制作期間がエヴァンゲリオン『Q』と『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||の様に9年かけて、脚本を何度もやり直し、撮影をしていたら終われたのでしょうか。問題は作品にもあるかもしれませんが、多くは自分の中にある「思春期」的なものからの卒業なのかもしれません。もしかすると9年後にスターウォーズ『8』を観た時に面白い作品に感じれるかもしれません。その時は私を囲んで地球の絵を背景に「おめでとう」と祝福してください。


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